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 研究活動

早稲田研究室が行っている研究プロジェクト・活動の紹介です.

  1. 海洋波における波群形成メカニズムと波群中の船体応答の解明
  2. 北極海夏季開放海域における波浪予測
  3. 爆弾低気圧・台風下の波浪
  4. 神津島における波力発電の実証実験
  5. 沿岸浅海域での波力発電に資する高解像度波浪推定に関する研究
  6. 黒潮を利用した海流発電
  7. ウィンドチャレンジャー計画運行
  8. GNSS-Rによる海洋観測研究
  9. メガ津波プロジェクト

 


1. 海洋波における波群形成メカニズムと波群中の船体応答の解明

科学研究費補助金基盤研究A「海洋波における波群形成過程と船体応答の解明」2015-2017年度

海洋技術安全研究所との共同研究

海洋波は様々な波長と方向に伝播する無数の正弦波の重ねあわせで表現されるが,弱い非線形性を考慮すると,粒子のように波がひとかたまりで伝播する波群が形成されることがわかってきた.そのメカニズムは光通信に利用される光ファイバー中のソリトンの形成過程と類似する.そして,波群は,統計的には非常に稀な,フリーク波・ローグ波の形成に重要であると考えられており,当研究室ではこれまでに,室内実験,観測,数値計算による研究を行ってきた.本研究では,平塚沖の海洋観測タワー(東京大学)にステレオカメラを設置し,空間的な波浪の分布を様々な海象条件下で計測する.そして,特徴的な波群を海上技術安全研究所の実海域再現水槽で再現し,船体の応答を計測する.弾性模型を使用することで,船体の曲げやねじりが波浪の3次元的な形状にどのように依存するかを精査する.

StereoCamera
ステレオカメラ画像

船体応答実験画像(海技研撮影)

 

2. 北極海夏季開放海域における波浪予測

文部科学省北極域研究推進プロジェクト(ArCS, Arctic Challenge for Sustainability)

北極気候 ・ 気象 ・ 海洋環境変動研究分野  「気象・海氷・波浪予測研究と北極航路支援情報の統合」2015-2019年度

海洋技術環境学専攻山口教授,国立極地研究所との共同研究

地球温暖化の影響により,夏季北極海の海氷は経年的に減少する傾向にある.これまでには存在していなかった海域で,新たに海洋波が発生し,その大きさが年々増大すると考えられる.その理由は,海域の拡大に伴い,風が波にエネルギーを供給できる距離(吹送距離)が増大することと同時に,海洋と海氷間の温度差に起因する大気海洋相互作用により低気圧が強大化していることがあげられる.本研究では, 2016年夏に北極海で2基の波浪ブイによる観測を行った.同時に,北極海波浪モデルを構築し,北極航路上での波浪予測シミュレーションを開始した.当研究室では,これまでに,日本沿岸域を1kmで解像する波浪モデルを構築し,21年間の波浪再解析を行ってきたが,その経験を活かす.

北極海の波浪観測ブイ

北極海波浪モデル(TodaiWW3-Arcs)

 

3. 爆弾低気圧・台風下の波浪

科学研究費補助金基盤研究A「激甚化する台風・爆弾低気圧起源の災害ハザード予測研究」 2015-2017年度

九州大学川村教授との共同研究

観測史上最大有義波高は20mに及ぶといわれている.しかし,過去21年間の波浪再解析(TodaiWW3)では,観測最大波高を上回る24mにおよぶ有義波高が台風直下で発生すると推定されている.実測と推算とが異なる理由としては,観測の欠如とモデルの精度の問題の二つが考えられる.本研究では,そのような強風下での波浪の推定精度の向上のために,再解析データの解析やシミュレーションを行っている.爆弾低気圧下での波浪場の空間的な分布,時間発達の様子,突風の発生の予測のため,大気海洋波浪結合モデルの構築を目指す.

1994年-2014年最大有義波高(TodaiWW3)

爆弾低気圧下波浪分布

 

4. 神津島における波力発電の実証実験

NEDO/三井造船株式会社 「風力等自然エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究」(2011~2017年度)

三井造船株式会社,海洋研究開発機構との共同研究

わが国のエネルギー事情は東日本大震災後に大きく転換しており,海洋エネルギーの利用には高い期待が寄せられている.沿岸に押し寄せる波エネルギーの利用は,洋上風力に続く有望なエネルギー源と考えられている.当研究室では,波エネルギーのポテンシャル推定と,設計に資する環境条件(波浪,海流・潮流,風)やサバイバル条件(50年最大波高など)の推定を行ってきた.2017年4月に係留式の波浪発電実証機が神津島沖に設置され,性能評価試験が開始した.波浪観測データを提供することで,発電機の制御をリアルタイムで行う.また,ダウンスケールによる高解像度波浪予測シミュレーションを行い,実証機の整備の補助,電気予報などを実施する.

21年間の波エネルギーの平均

神津島に設置された発電機

 

5. 沿岸浅海域での波力発電に資する高解像度波浪推定に関する研究

環境省・三井造船 沿岸域における次世代型波力発電システムの技術開発・実証事業
「沿岸型波力発電装置設置海域の高精度波浪推定に関する研究」

三井造船昭島研究所共同研究

沖合を伝播してくるうねりは,水深が浅くなるとともに波長が短くなり,波高が高くなる.波パワーは波高の二乗と周期の積に比例する.周期は変わらないため,有限水深の効果による波高の増大は波力発電にとって有利である.そのためには,浅海域の細かい地形を表現できる,高解像度のシミュレーションが必要である.TodaiWW3をベースに,防波堤や小さな岩礁なども表現できる高解像度ダウンスケールモデルを構築している.資源量推定とともに,予測計算を行い,波力発電事業に必要な波浪情報を構築する.

高解像度波浪モデル地形と格子

波力推算例

 

6. 黒潮を利用した海流発電

NEDO(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構)
「風力等自然エネルギー技術研究開発・海洋エネルギー技術研究開発・海洋エネルギー発電システム実証研究」

株式会社IHI,海洋研究開発機構と海洋技術環境学専攻高木教授との共同研究

世界有数の流量を持つ西岸境界流である黒潮は,台湾の東から大陸棚に沿って北上し,トカラ海峡を通過して東シナ海から太平洋に流れ出て日本南岸を流れる.紀伊半島から伊豆海嶺にかけての流路の変動は時に数百キロメートルと大きいが,トカラ海峡や紀伊半島西など比較的流路が安定している海域がある.しかしながら,発電機のスケールから考えると,流路自体の不安定や,中規模渦,風などの擾乱による変動幅は無視できず,発電適地の選定のためには,黒潮流路の変動特性を理解する必要がある.そのために,高解像度シミュレーションと現場での観測を,三宅島,口之島で行ってきた.海洋循環モデルの予測精度をさらに高める必要があり,衛星観測データなどの活用による更なる改善を目指す.

黒潮資源量(JCOPE-T-EAS)

トカラ海峡の黒潮流路(200m格子)

 

7. ウィンドチャレンジャー計画運行

JIP(商船三井、大島造船、タダノ、東京計器との共同研究)(2017年度)

ノースセール,ACTとの共同研究

かつて大航海時代には,貿易風と偏西風を利用する帆船による海洋交易が行われてきたが,産業革命以降,化石燃料を用いたエンジン推進による貨物船に全て取って代わられた.しかしながら,温室効果ガスや大気汚染物質の排出量削減のために,船舶からの排出を減らすことは急務であり,風の力を利用した帆主機従船の開発が期待されている.定時性を大きく犠牲にせず,できるだけエネルギー消費を抑えるためには,風を読む必要がある.当研究室では,運行シミュレーターWCSS (Wind Challenger Sailing Simulation)と風と波の予測データベースを組み合わせたWC-Navi (Wind Challenger Navigator)の開発を行っている.米国NCEPの16日間の風予測データを6時間毎に取得し,TodaiWW3-WCPによる太平洋モデルによる波浪予測を行う.実船搭載にむけ,風を利用した運行計画について研究を進める.

ウィンドチャレンジャー4枚帆

WCSS航路選択例